努力呼吸


正常な安静時の呼吸で動員される呼吸筋は通常、吸気時の

外肋間筋と横隔膜です。

呼気時は呼吸筋は動員されません。

通常の呼吸様式は外肋間筋が働く胸式呼吸と横隔膜が働く腹式

呼吸が共存した呼吸運動になります。

外肋間筋や横隔膜だけでは呼吸運動が困難な場合は呼吸補助筋

等他の筋肉が動員され呼吸を助けようとします。

 

努力呼吸とは通常の呼吸筋(外肋間筋や横隔膜)だけでは呼吸が

困難な時に呼吸補助筋の力をかりて呼吸することを努力呼吸といいます。

安静時には使用されない呼吸筋(呼吸補助筋)を働かせて行われ

る呼吸のことです。

鼻翼呼吸や肩呼吸、下顎呼吸、陥没呼吸等の呼吸状態を努力呼吸といいます。

 

鼻翼呼吸

吸気時に鼻翼を開いて空気を少しでも多く取り込もうとする

呼吸になります。

臨終が近い時や重篤な呼吸不全等の時に見られます。

乳児では呼吸窮迫症候群などで見られます。

 

下顎呼吸

下顎を動かして口をパクパクさせて呼吸をする状態です。

肺での換気は行われておらず極めて悪い状態になります。

臨終が近い時や重篤な呼吸不全等の時に見られます。

 

肩呼吸

僧帽筋等が動員され肩の上下運動を伴う呼吸になります。

喘息発作時等に見られます。

 

陥没呼吸

胸腔内が強い陰圧になる事で吸気時に肋間や胸骨上、鎖骨上

みぞおち等の部分が陥没する呼吸になります。

上気道の狭窄や閉塞があると息を吸おうとして吸気筋が収縮

しても充分な空気が肺へ流入しない為、強い陰圧のままに

なります。その為、胸郭の軟らかい部分が凹むことになります。

気道に痰などの分泌物があると内腔が狭くなり、気道抵抗が

強くなります。

喘息の発作時や、乳児では呼吸窮迫症候群などでも見られます。

 

吸気延長

咽頭浮腫など、上気道の狭窄や閉塞等の時に見られます。

 

呼気延長

気管支喘息発作時や慢性閉塞性肺疾患等の末梢気道の狭窄や

閉塞などの時に見られます。

 

呼吸補助筋

呼吸補助筋とは努力呼吸等の時に使われる筋肉のこと。

安静時に使われる横隔膜や外肋間筋以外の呼吸筋を呼吸補助筋

といいます。

吸気(吸息)の努力時に使われる筋肉は胸鎖乳突筋、僧帽筋

斜角筋等があります。

呼気(呼息)の努力時に使われる筋肉は内肋間筋、腹直筋

外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋等が収縮します。

呼吸補助筋は努力呼吸や深呼吸、運動、咳嗽時などに使われます。


◇参考文献

書籍

「フィジカルアセスメントナースに必要な診断の知識と技術」第4版 医学書院 p44-p45

「ナース必携最新基本手技AtoZ」EXPERT・NURSE 保存版 小学館 p24~p26

「わかって身につくバイタルサイン(学研)」p110-p112

「人体生理学ノート」金芳堂 p78

「実践できる在宅看護技術ガイド(学研)」p108-p111

「呼吸サポートのための呼吸管理セーフティーBOOK(メディカ出版)」p90-p97 p101-p102

「器械的人工呼吸マニュアル(文化放送ブレーン)p26-p27

「一歩先ゆく呼吸リハビリテーション(メディカ出版)」p134-p139

「最新医学大辞典」医歯薬出版株式会社 p273 p282 p899 p817 p925 p1040 p1177 p1215 p1022

「ミッフィーの早引き看護略語ハンドブック」

「訪問看護ハンドブック(日本看護協会出版会)」

「呼吸器看護ポケットナビ(中山書店)」

「ゼロからわかる救急・急変看護(成美堂出版)」p100 p185

「イラスト救急処置マニュアル(南江堂)」p46

「ロールプレイで学ぶ 呼吸ケア・呼吸管理のキーポイント」メディカ出版 p43

「わかる!できる!気管吸引あんしん教育ガイド(MCメディカ出版)」p37

 

インターネット

日本臨床検査医学会サイト内

異常呼吸

https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/024.pdf

 

ウィキペディアHP内

https://ja.wikipedia.org/wiki/過呼吸

https://ja.wikipedia.org/wiki/呼吸

 

厚生労働省サイト内

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/04/dl/s0420-6k.pdf